問題1.7 正則関数は整域,有理型関数は体

この問題にも略解が付いていないので, 多少需要があるでなかろうか.
さて問題文は以下の通り(p.16*1

問題 1.7  \mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(V) は整域,  \mathcal{M}_{\mathbb{P}^1}(V) は体であることを示せ.

記号の意味ははp.15に書いている.
また重要な事実として,V \mathbb{P}^1 の領域(連結な開集合)である

まず初めに, \mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(V)  \mathcal{M}_{\mathbb{P}^1}(V) も 共に可換環であることに注意しよう.

さて次は, \mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(V) が整域であることを示そう.
f \in \mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(V)^{\times},
g \in \mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(V)f \cdot g =0なるものを取ってこよう.
このときg=0を示せばよい.

ここでA:=g^{-1}(0)=\{P \in V|g(P)=0\}と定めよう.
さてAは空ではないV閉集合である.

1.Aが空でないことの証明
Aが空だと仮定する,任意のP\in Vに対して g(P)\neqであると仮定する.
一方で,f \cdot g =0,つまり任意のP\in Vに対してf(P)\cdot g(P)=0となる.
したがって,{}^{\forall P \in V} f(P)=0.これはf \neq 0に矛盾する.

2.Aが閉集合であることの証明
一点集合\{0\}ハウスドルフ空間:\mathbb{C}閉集合である.
したがっって連続写像による閉集合の引き戻しであるA=g^{-1}(0)V閉集合である.

さて次はAVの開集合でもあることを示そう.
ここでも背理法を使おう.AVの開集合でないことを仮定する.
つまり,a \in Aが存在して,
a \in Aの任意の開近傍 O \underset{open}{\subset}Vに対して,
 O \cap A^{c} \neq \emptyset.
このとき,aの開近傍として,中心a半径1/nの開円盤を取る.
上の仮定から {}^{\exists}a_{n} \in \mathbb{D}_{1/n}(a)\cap A^{c}である. つまり,A^{c}元からなる点列で a \in Aに収束するものがとれる.
一方でfについて視点を変えると
{}^{\exists}\{a_n\}_{n \in \mathbb{N}} \in V^{\mathbb{N}} s.t. \lim_{n \to \infty} a_n=a,f(a_n)= 0である. ここで一致の定理から*2
f=0となるがこれは矛盾.

上の結果をまとめると,Aは空ではないVの開かつ閉な集合である.
連結空間Vにおいてこのような集合は,V全体のみである.
A=Vすなはち,g=0.

したがって題意は示された.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

*2:今野 一宏(2015) リーマン面と代数曲線のp.9参照

問題1.6 複素射影直線上の有理型関数は同次多項式の比で書ける.

この問題には略解が付いていないので, 多少需要があるでなかろうか.
さて問題文は以下の通り(p.16*1

問題 1.6  [X_0,X_1] \mathbb{P}^1の同次座標とする. F(X_0,X_1),G(X_0,X_1)を次数がともにmである同次多項式とする. また, 多項式としてG(X_0,X_1)\neq 0とする. このとき. F(X_0,X_1)/G(X_0,X_1)\mathbb{P}^1上の有理型関数を定めることを示せ. 逆に\mathbb{P}^1上の有理型関数はすべてこのようにして得られることを示せ.

まず次を思い出しておこう.

 \mathcal{M}_{\mathbb{P}^1}({\mathbb{P}^1})=\mathbb{C}(z)

これは\mathbb{P}^1上の有理型関数全体は,\mathbb{C}_z上の有理関数の延長全体である,という主張. つまり解析的に定義されたものが,よく代数的なもの(有理関数体)と同じだという素敵な命題だ.
しかし, \mathbb{P}^1z座標で書かれているので少し不満が残る(?). 二つの座標zwを同等に扱った同次座標ではどのような函数体になっているかが気になるのである.

さて問題にとりかかろう. まずは, F(X_0,X_1)/G(X_0,X_1)\mathbb{P}^1上の有理型関数を定めるかを調べよう.

F(X_0,X_1)=\sum_{i+j=m}a_{ij}X_0^iX_1^j
G(X_0,X_1)=\sum_{i+j=m}b_{ij}X_0^iX_1^j where \{b_{ij}\}\neq\{0\}.

ここで, P =[x_0,x_1]\in \mathbb{P}^1に対して (F/G)(P):=F(x_0,x_1)/G(x_0,x_1)と定めよう.
ここでPの別の代表元[y_0,y_1]=[\lambda x_0,\lambda x_1]に対して,
F(\lambda x_0,\lambda x_1)/G(\lambda x_0,\lambda x_1) =(\sum_{i+j=m}a_{ij}(\lambda x_0)^i(\lambda x_1)^j)/(\sum_{i+j=m}b_{ij}(\lambda x_0)^i(\lambda x_1)^j) =(\sum_{i+j=m}\lambda^ma_{ij}( x_0)^i(x_1)^j)/(\sum_{i+j=m}\lambda^mb_{ij}(_0)^i(x_1)^j) =(\sum_{i+j=m}a_{ij}( x_0)^i(x_1)^j)/(\sum_{i+j=m}b_{ij}(_0)^i(x_1)^j) =F(x_0,x_1)/G(x_0,x_1)

したがって上の(F/G)(P):=F(x_0,x_1)/G(x_0,x_1)はwell-definedeなわけですね.
さて正則性について議論するためには(F/G\mathbb{C}_z\mathbb{C}_w上での表示を見てみよう.

h_z(z):=(F/G)([1,z])
h_w(w):=(F/G)([w,1])
ここでh_z(\frac{1}{w})=(F/G)([1,\frac{1}{w}])=(F/G)([w,1])=h_w(w) on \mathbb{C}_{w}^{*}となっていることにも注意しよう.
h_z(z):=(F/G)([1,z])=F(1,z)/G(1,z)=(\sum_{i+j=m}a_{ij}1^iz^j)/(\sum_{i+j=m}b_{ij}1^iz^j)

=\left(\sum_{j=0}^m  (\sum_{i=0}^{m-j} a_{ij})  \cdot   z^j\right) / \left(\sum_{j=0}^m  (\sum_{i=0}^{m-j} b_{ij})  \cdot   z^j\right)
これは\mathbb{C}_z上の有理型関数である.

全く同様に,
h_w(w):=(F/G)([w,1])=F(w,1)/G(w,1)=(\sum_{i+j=m}a_{ij}w^i1^j)/(\sum_{i+j=m}b_{ij}w^i1 ^j) =\left(\sum_{i=0}^m  (\sum_{j=0}^{m-i} a_{ij})  \cdot   z^i\right) / \left(\sum_{i=0}^m  (\sum_{j=0}^{m-i} b_{ij})  \cdot   z^i\right)
これは\mathbb{C}_w上の有理型関数である.

したがって上の(F/G)\mathbb{P}^1上の有理型関数を定める.

逆に\mathbb{P}^1上の有理型関数hは,
次数がともにmである同次多項式F(X_0,X_1),G(X_0,X_1)が存在して,h=(F/G)となることを示そう.

 \mathcal{M}_{\mathbb{P}^1}({\mathbb{P}^1})=\mathbb{C}(z)

今勝手に\mathcal{M}_{\mathbb{P}^1}({\mathbb{P}^1})hを取ってくると,
h\mathbb{C}_zの上の有理関数(f/g)(z)=\left(\sum_{i} f_i z^i\right)/\left(\sum_{j} g_j z^j\right) \in \mathbb{C}(z)が存在して,
h([1,z])=(f/g)(z).
ここで F(X_0,X_1):=X_0^{\max\{deg(f),deg(g)\}} \cdot f(\frac{X_1}{X_0}), G(X_0,X_1):=X_0^{\max\{deg(f),deg(g)\}} \cdot g(\frac{X_1}{X_0})とする. こうすると二つとも次数m:=\max\{deg(f),deg(g)\}の同次多項式となる. さらに(F/G)([1,z])=(f/g)(z)(=h([1,z])となることも容易に確認できますね.
したがって(F/G)=hであることがわかる.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

問題 1.5 射影直線上の有理型関数

問題は以下の通り(p.14*1 )
これも問題略解に誤植があるので注意が必要!!

問題 1.5
1. 次の2つの有理型関数が貼りあわされて\mathbb{P}^1=\mathbb{C}_z \cup \mathbb{C}_w 上の有理型関数fを定めたという.定数a,b,cの値を求めよ:f_z(z)=\frac{z+1}{z-2}, f_w(w)=\frac{aw+b}{cw+1}.
2. \mathbb{C}_z 上の有理型関数f_z(z)=\frac{z^2+1}{z^3-1}, g_z(z)=z^4-1はそれぞれ一意的に\mathbb{P}^1上の有理型関数f, gに延長されることを示し, f, gの零点, 極及びそれらの位数を求めよ.
3. \mathbb{C}_z 上の正則関数h_z(z)=e^z\mathbb{P}^1上の有理型関数に延長できるか.

これらの問題はすべてp.9の(1.5)式

V_z \cap V_wf_w(w)=f_z(\frac{1}{w})

という条件について考えていくものだ. 式だけではわかりづらいので図にしてみた

f:id:RiemannSurface:20180521024050j:plain

  1. について
    f_z(\frac{1}{w})=\frac{\frac{1}{w}+1}{\frac{1}{w}-2}=\frac{w+1}{-2w+1}=\frac{aw+b}{cw+1}=f_w(w)
    有理型関数の剛性から  (a,b,c)=(1,1,-2).

(極について考えc=-2. w=0について考えb=1. w=-1について考えa=1と結論付けてもよいですね.)

  1. について
    延長されるなら, f_w,g_wはどのような形をしている必要があるのかを考えよう.

まずはfについて考えていこう.
f_w(w)=f_z(\frac{1}{w}) から
f_w(w) =\frac{(\frac{1}{w})^2+1}{(\frac{1}{w})^3-1} =\frac{w+w^3}{1-w^3}
これは有理型関数なので, 二つの有理型関数, [texf_z], f_wが貼りあわせると, fが得られる.
次はこのfの零点と曲を調べていく,
f_z(z)=\frac{z^2+1}{z^3-1}は,
z=\pm \sqrt{-1}に一位の零点*2
z=\zeta_3^k(k=0,1,2)に一位の極

f_(w)=\frac{w+w^3}{1-w^3}は,
w=0,\pm \sqrt{-1}に一位の零点
w=\zeta_3^k(k=0,1,2)に一位の極を持つ.

zの座標でまとめると,
fz=\infty,\pm \sqrt{-1}に一位の零点
z=\zeta_3^k(k=0,1,2)に一位の極をもつ.

次はgについて考えていこう.
g_w(w)=g_z(\frac{1}{w}) から
g_w(w) =(\frac{1}{w})^4-1 =\frac{1-w^4}{w^4}
これは有理型関数なので, 二つの有理型関数, [texg_z], g_wが貼りあわせると, gが得られる.
次はこのfの零点と曲を調べていく,
g_z(z)=z^4-1は,
z=\zeta_4^k(k=0,1,2,3)に一位の零点

g_w(w)=\frac{1-w^4}{w^4}は,
w=\zeta_4^k(k=0,1,2,3)に一位の零点
w=0に一位の極を持つ.

zの座標でまとめると,
gz=\zeta_4^k(k=0,1,2,3)に一位の零点
z=\inftyに一位の極を持つ.

3. について
h_z(z) \mathbb{P}^1上の有理型関数に延長されたとすると, h_w(w)=h_z(\frac{1}{w})から,
h_w(w)=e^{\frac{1}{w}}. これは\mathbb{C}_w上の有理型関数に拡張されない. 実際w=0のLaurent展開を考えると.
h_w(w)=e^{\frac{1}{w}}
=\sum_{n=0}^{\infty}(\frac{1}{w})^n となり.w=0で真性特異点を持つ.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

*2:問題略解では\pm 1となっているが,そううると[tex:1が零点かつ極になる.]

問題 1.4 Laurent展開

問題 1.4 は巻末の略解が誤っている部分なので注意が必要です.

問題は以下の通り(p.11*1 )

問題 1.4 \mathbb{C}_z上の有理型函数\phi(z)=\frac{z}{(z+1)(z^2-1)}の極と極の点でのローラン展開を求めよ.

極とは分母がゼロになるところと考えればよいので, 極はz= \pm 1になりますね.

\phi(z)=\frac{z}{(z+1)^2(z-1)}とすこしお色直しをしておきましょう.

(i)z=-1の近くでの様子

\phi(z)
=\frac{z}{(z+1)^2(z-1)}
=\frac{\{(z+1)-1\}} {(z+1)^2\{(z+1)-2\} }
=\frac{\zeta-1}{\zeta^2(\zeta-2)} (\zeta=z+1とした)
=\zeta^{-2}(\zeta-1)\frac{1}{\zeta-2}
=\zeta^{-2}(\zeta-1)(-\frac{1}{2})\frac{1}{1-(\frac{1}{2}\zeta)}
!=!\zeta^{-2}(\zeta-1)(-\frac{1}{2})\sum_{n=0}^{\infty}(\frac{1}{2}\zeta)^{n} (ここの等号は局所的です)
=(\zeta-1)(-\frac{1}{2})\sum_{n=0}^{\infty} (\frac{1}{2})^{n}\zeta^{n-2}
=(-\frac{1}{2})\{\sum_{n=0}^{\infty} (\frac{1}{2})^{n}\zeta^{n-1}-\sum_{n=0}^{\infty} (\frac{1}{2})^{n}\zeta^{n-2}\}
=(-\frac{1}{2})\{\sum_{n=-1}^{\infty} (\frac{1}{2})^{n+1}\zeta^{n}-\sum_{n=-2}^{\infty} (\frac{1}{2})^{n+2}\zeta^{n}\}
=(-\frac{1}{2})\{-\zeta^{-2}+(1-1/2)\zeta^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty} ((\frac{1}{2})^{n+1}-(\frac{1}{2})^{n+2})\zeta^{n}\}
=(\frac{1}{2})\zeta^{-2}+(-\frac{1}{4})\zeta^{-1}+(-\frac{1}{2})\sum_{n=0}^{\infty} ((\frac{1}{2})^{n+1}-(\frac{1}{2})^{n+2})\zeta^{n} =(\frac{1}{2})\zeta^{-2}+(-\frac{1}{4})\zeta^{-1}+(-\frac{1}{2})\sum_{n=0}^{\infty} (\frac{1}{2})^{n+2}(2-1)\zeta^{n}
=(\frac{1}{2})\zeta^{-2}+(-\frac{1}{4})\zeta^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty} -(\frac{1}{2})^{n+3}\zeta^{n}
=(\frac{1}{2})(z+1)^{-2}+(-\frac{1}{4})(z+1)^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty} -(\frac{1}{2})^{n+3}(z+1)^{n}

計算確認を www.wolframalpha.com を使ってしてみました.

(i)z=1の近くでの様子

\phi(z)
=\frac{z}{(z+1)^2(z-1)}
=\frac{\{(z-1)+1\}} {\{(z-1)+2\}^2(z+1)}
=\frac{\zeta+1}{(\zeta+2)^2\zeta} (\zeta=z-1とした)
=(\zeta)^{-1}(\zeta+1)(\frac{1}{\zeta+2})^2
=(\zeta)^{-1}(\zeta+1)(-\frac{1}{\zeta+2})^{\prime}
=(\zeta)^{-1}(\zeta+1)(-\frac{1}{2}\frac{1}{1-(\frac{1}{2}\zeta)})^{\prime}
=-\frac{1}{2}(\zeta)^{-1}(\zeta+1)(\frac{1}{1-(\frac{1}{2}\zeta)})^{\prime}
!=!-\frac{1}{2}(\zeta)^{-1}(\zeta+1)(\sum_{n=0}^{\infty}(-\frac{1}{2}\zeta)^{n})^{\prime} (ここの等号は局所的です) =-\frac{1}{2}(\zeta)^{-1}(\zeta+1)(\sum_{n=1}^{\infty}-\frac{1}{2}n(-\frac{1}{2}\zeta)^{n-1})
=-\frac{1}{2}(\zeta)^{-1}(\zeta+1)(\sum_{n=1}^{\infty}-\frac{1}{2}n(-\frac{1}{2})^{n-1}\zeta^{n-1})
=(\zeta+1)(\sum_{n=1}^{\infty}n(-\frac{1}{2})^{n+1}\zeta^{n-2})
=\sum_{n=1}^{\infty}n(-\frac{1}{2})^{n+1}\zeta^{n-1}+\sum_{n=1}^{\infty}n(-\frac{1}{2})^{n+1}\zeta^{n-2} =\sum_{n=0}^{\infty}(n+1)(-\frac{1}{2})^{n+2}(\zeta)^{n}+\sum_{n=-1}^{\infty}(n+2)(-\frac{1}{2})^{n+3}(\zeta)^{n} =\sum_{n=0}^{\infty}(n+1)(-\frac{1}{2})^{n+2}(\zeta)^{n}+1(-\frac{1}{2})^{(-1)+3}\zeta^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty}(n+2)(-\frac{1}{2})^{n+3}(\zeta)^{n} =\frac{1}{4}\zeta^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty}\{(n+1)(-\frac{1}{2})^{n+2}+(n+2)(-\frac{1}{2})^{n+3}\}\zeta^{n} =\frac{1}{4}\zeta^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty}(-\frac{1}{2})^{n+3}\{-2(n+1)+(n+2)\}\zeta^{n} =\frac{1}{4}\zeta^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty}-(-\frac{1}{2})^{n+3}(-n)\zeta^{n}
=\frac{1}{4}\zeta^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty}n(-\frac{1}{2})^{n+3}\zeta^{n}
=\frac{1}{4}(z-1)^{-1}+\sum_{n=0}^{\infty}n(-\frac{1}{2})^{n+3}(z-1)^{n}

計算確認を www.wolframalpha.com を使ってしてみました.

なかなか骨の折れる計算でした.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

問題 1.3 同次多項式の非零点

さて問題文は以下の通り(p.6*1 )

問題 1.3 F(X_0,X_1) \in \mathbb{C}[X_0,X_1]を同次多項式とする.
(F\neq 0):=\{ P \in \mathbb{P}^{1} | F(P)\neq 0\}とおく. (F\neq 0) \mathbb{P}^{1}の開集合であることを示せ.

この問題も \mathbb{P}^{1}が商空間であることを利用しよう.
定義から,(F\neq 0) \mathbb{P}^{1}の開集合 \iff  \pi^{-1}((F\neq 0))  \mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\}の開集合.
 \pi^{-1}((F\neq 0))
 =\{(a_0,  a_1) \in  \mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\} | F([a_0,a_1])\neq 0\}
 =\{(a_0,  a_1) \in  \mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\} | F(a_0,a_1)\neq 0\}=:U

Uが開集合であることを言えばいい.
ここでその補集合,つまりF\mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\}の中の零点F^{-1}(0)について考えてみよう.

F\mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\}から\mathbb{C}への連続写像であるので, F^{-1}(0)\mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\}閉集合*2
U=(\mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\}) -F^{-1}(0)なので, U\mathbb{C}^{2}-\{(0,0)\}の開集合.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

*2:閉集合である一点\{0\} \in \mathbb{C}連続写像Fによる逆像F^{-1}(0)閉集合.ここでハウスドルフ空間の一点集合は閉集合であることに注意

問題 1.2 商空間上の連続函数

記念すべき二問目の演習(笑) やっていきましょう.

問題 1.2 X位相空間とする. f\colon \mathbb{P}^1 \to X  \mathbb{P}^1 からXへの写像とする.
このとき,  fが連続であることと  f \circ \pi \colon \mathbb{C}^2 -\{(0,0)\} \to Xが連続であることは同値である. これを示せ.

これはもう少し一般化した形で解答を得られるので,

定義 1.2.1 (A,\mathcal{O})位相空間,Bを集合, \pi\colon A \to B A からBへの写像とする.
このとき,\mathcal{V}:=\{V \subset B|f^{-1}({V}) \in \mathcal{O}\}はBの位相を定める.
この(B,\mathcal{V})\piによるAの商空間と呼ぶ.

補題 1.2.2 (B,\mathcal{V})\piによるAの商空間, X位相空間とする. f\colon B \to X  BからXへの写像とする. このとき,  fが連続であることと  f \circ \pi \colon A \to Xが連続であることは同値である.
(証明)
fが連続
\iff Xの任意の開集合Wに対して,f^{-1}(W)Bの開集合
!\iff! Xの任意の開集合Wに対して,\pi^{-1}(f^{-1}(W))Aの開集合
\iff Xの任意の開集合Wに対して,(f \circ \pi )^{-1}(W)Aの開集合
\iff  f \circ \pi \colon A \to Xが連続.

問題 1.1 斉次多項式の射影空間における零点

記念すべき一問目の演習、回答作成を行っていきましょう,やったー

さて問題文は以下の通り(p.3*1 )

mを正の整数とする.
\zeta_{m}:=e^{{2\pi \sqrt{-1}}/{m}}(1の原始m乗根)とおく.
同次多項式F(X_0,X_1):=X_0^m-X_1^m \in \mathbb{C}[X_0,X_1]に対してF(P)=0となる\mathbb{P}^1の点Pを全て求め[a:b]の形で表せ.全部で何個あるか?

射影直線\mathbb{P}^1は次のように直和分解される.  \mathbb{P}^1=U_0 \coprod  \{ [0:1] \}
ここで U_0:=\{ [a_0:a_1]=[1:a_1/a_0]\in  \mathbb{P}^1 | a_0 \neq 0\}=\{ [1:z_1 ]\in  \mathbb{P}^1\}である.
P \in \mathbb{P}^1が上のどちらに属しているかで場合分けをして考えてみよう.

(i) P \in U_0つまり,P=[1:z_1]の時.
F(P)=F([1:z_1])=1^m-z_1^m=0.
これを解くと,z_1=\zeta_{m}^k=e^{{2\pi \sqrt{-1}k}/{m}} (k=0,1,\ldots,m-1)m個.*2
つまり,P=[1:\zeta_{m}^k] (k=0,1,\ldots,m-1)m個である.

(ii)P=[0:1]のとき,
F(P)=F([0:1])=0^m-1^m=-1 \neq 0

(i),(ii)よりF(P)=0となる\mathbb{P}^1の点Pは,
P=[1:\zeta_{m}^k](k=0,1,\ldots,m-1)m個である.

\mathbb{P}^1違う形で分解して解くととどうなるか気になったのでやってみました.
以下ではそれを問題形式にしておきました.

類題1.1.1
上の問題1.1を \mathbb{P}^1=\{ [1:0] \} \coprod U_1  と直和分解して上の手順をたどれ.
ここで U_1:=\{ [a_0:a_1]=[a_0/a_1:1]\in  \mathbb{P}^1 | a_1 \neq 0\}=\{ [z_0:1 ]\in  \mathbb{P}^1\}

類題1.1.2
\{[1:\zeta_{m}^k]|k=0,1,\ldots,m-1\}=\{[\zeta_{m}^k:1]|k=0,1,\ldots,m-1\}を示せ.

他にも二変数の同次多項式を考えれば, 類題をたくさん作れますね.

類題1.1.3
同次多項式F(X_0,X_1):=X_0^2-2X_0X_1+X_1^2 \in \mathbb{C}[X_0,X_1]に対してF(P)=0となる\mathbb{P}^1の点Pを全て求め[a:b]の形で表せ.全部で何個あるか?

\mathbb{P}^1は一次元の複素多様体ですので,
そこにFという拘束条件を一つ与えると,
零次元の複素多様体(つまり点)になるのですね.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

*2:これらは相異なる.なぜなら\zeta_{m}は1の原始!!m乗根