問題 1.1 斉次多項式の射影空間における零点

記念すべき一問目の演習、回答作成を行っていきましょう,やったー

さて問題文は以下の通り(p.3*1 )

mを正の整数とする.
\zeta_{m}:=e^{{2\pi \sqrt{-1}}/{m}}(1の原始m乗根)とおく.
同次多項式F(X_0,X_1):=X_0^m-X_1^m \in \mathbb{C}[X_0,X_1]に対してF(P)=0となる\mathbb{P}^1の点Pを全て求め[a:b]の形で表せ.全部で何個あるか?

射影直線\mathbb{P}^1は次のように直和分解される.  \mathbb{P}^1=U_0 \coprod  \{ [0:1] \}
ここで U_0:=\{ [a_0:a_1]=[1:a_1/a_0]\in  \mathbb{P}^1 | a_0 \neq 0\}=\{ [1:z_1 ]\in  \mathbb{P}^1\}である.
P \in \mathbb{P}^1が上のどちらに属しているかで場合分けをして考えてみよう.

(i) P \in U_0つまり,P=[1:z_1]の時.
F(P)=F([1:z_1])=1^m-z_1^m=0.
これを解くと,z_1=\zeta_{m}^k=e^{{2\pi \sqrt{-1}k}/{m}} (k=0,1,\ldots,m-1)m個.*2
つまり,P=[1:\zeta_{m}^k] (k=0,1,\ldots,m-1)m個である.

(ii)P=[0:1]のとき,
F(P)=F([0:1])=0^m-1^m=-1 \neq 0

(i),(ii)よりF(P)=0となる\mathbb{P}^1の点Pは,
P=[1:\zeta_{m}^k](k=0,1,\ldots,m-1)m個である.

\mathbb{P}^1違う形で分解して解くととどうなるか気になったのでやってみました.
以下ではそれを問題形式にしておきました.

類題1.1.1
上の問題1.1を \mathbb{P}^1=\{ [1:0] \} \coprod U_1  と直和分解して上の手順をたどれ.
ここで U_1:=\{ [a_0:a_1]=[a_0/a_1:1]\in  \mathbb{P}^1 | a_1 \neq 0\}=\{ [z_0:1 ]\in  \mathbb{P}^1\}

類題1.1.2
\{[1:\zeta_{m}^k]|k=0,1,\ldots,m-1\}=\{[\zeta_{m}^k:1]|k=0,1,\ldots,m-1\}を示せ.

他にも二変数の同次多項式を考えれば, 類題をたくさん作れますね.

類題1.1.3
同次多項式F(X_0,X_1):=X_0^2-2X_0X_1+X_1^2 \in \mathbb{C}[X_0,X_1]に対してF(P)=0となる\mathbb{P}^1の点Pを全て求め[a:b]の形で表せ.全部で何個あるか?

\mathbb{P}^1は一次元の複素多様体ですので,
そこにFという拘束条件を一つ与えると,
零次元の複素多様体(つまり点)になるのですね.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

*2:これらは相異なる.なぜなら\zeta_{m}は1の原始!!m乗根