問題 1.5 射影直線上の有理型関数

問題は以下の通り(p.14*1 )
これも問題略解に誤植があるので注意が必要!!

問題 1.5
1. 次の2つの有理型関数が貼りあわされて\mathbb{P}^1=\mathbb{C}_z \cup \mathbb{C}_w 上の有理型関数fを定めたという.定数a,b,cの値を求めよ:f_z(z)=\frac{z+1}{z-2}, f_w(w)=\frac{aw+b}{cw+1}.
2. \mathbb{C}_z 上の有理型関数f_z(z)=\frac{z^2+1}{z^3-1}, g_z(z)=z^4-1はそれぞれ一意的に\mathbb{P}^1上の有理型関数f, gに延長されることを示し, f, gの零点, 極及びそれらの位数を求めよ.
3. \mathbb{C}_z 上の正則関数h_z(z)=e^z\mathbb{P}^1上の有理型関数に延長できるか.

これらの問題はすべてp.9の(1.5)式

V_z \cap V_wf_w(w)=f_z(\frac{1}{w})

という条件について考えていくものだ. 式だけではわかりづらいので図にしてみた

f:id:RiemannSurface:20180521024050j:plain

  1. について
    f_z(\frac{1}{w})=\frac{\frac{1}{w}+1}{\frac{1}{w}-2}=\frac{w+1}{-2w+1}=\frac{aw+b}{cw+1}=f_w(w)
    有理型関数の剛性から  (a,b,c)=(1,1,-2).

(極について考えc=-2. w=0について考えb=1. w=-1について考えa=1と結論付けてもよいですね.)

  1. について
    延長されるなら, f_w,g_wはどのような形をしている必要があるのかを考えよう.

まずはfについて考えていこう.
f_w(w)=f_z(\frac{1}{w}) から
f_w(w) =\frac{(\frac{1}{w})^2+1}{(\frac{1}{w})^3-1} =\frac{w+w^3}{1-w^3}
これは有理型関数なので, 二つの有理型関数, [texf_z], f_wが貼りあわせると, fが得られる.
次はこのfの零点と曲を調べていく,
f_z(z)=\frac{z^2+1}{z^3-1}は,
z=\pm \sqrt{-1}に一位の零点*2
z=\zeta_3^k(k=0,1,2)に一位の極

f_(w)=\frac{w+w^3}{1-w^3}は,
w=0,\pm \sqrt{-1}に一位の零点
w=\zeta_3^k(k=0,1,2)に一位の極を持つ.

zの座標でまとめると,
fz=\infty,\pm \sqrt{-1}に一位の零点
z=\zeta_3^k(k=0,1,2)に一位の極をもつ.

次はgについて考えていこう.
g_w(w)=g_z(\frac{1}{w}) から
g_w(w) =(\frac{1}{w})^4-1 =\frac{1-w^4}{w^4}
これは有理型関数なので, 二つの有理型関数, [texg_z], g_wが貼りあわせると, gが得られる.
次はこのfの零点と曲を調べていく,
g_z(z)=z^4-1は,
z=\zeta_4^k(k=0,1,2,3)に一位の零点

g_w(w)=\frac{1-w^4}{w^4}は,
w=\zeta_4^k(k=0,1,2,3)に一位の零点
w=0に一位の極を持つ.

zの座標でまとめると,
gz=\zeta_4^k(k=0,1,2,3)に一位の零点
z=\inftyに一位の極を持つ.

3. について
h_z(z) \mathbb{P}^1上の有理型関数に延長されたとすると, h_w(w)=h_z(\frac{1}{w})から,
h_w(w)=e^{\frac{1}{w}}. これは\mathbb{C}_w上の有理型関数に拡張されない. 実際w=0のLaurent展開を考えると.
h_w(w)=e^{\frac{1}{w}}
=\sum_{n=0}^{\infty}(\frac{1}{w})^n となり.w=0で真性特異点を持つ.

*1:小木曽啓示 (2002) 「代数曲線論」 朝倉書店

*2:問題略解では\pm 1となっているが,そううると[tex:1が零点かつ極になる.]